【焼杉と中庭】一級建築士が魅力を語る|築50年の母屋に増築

築50年の母屋に増改築されたお客様(神崎郡・I様)を訪問・一級建築士にインタビュー

是非ご覧ください!

目次

神崎郡I様邸 リフォーム事例

母屋の隣に増改築された住まいは、焼杉を用いた南側ファサードが印象的な外観。
杉柾目の引き戸と淡路砂利のポーチが調和し、趣のある玄関を演出します。

このI様邸を訪問し、設計した一級建築士後藤にインタビューしました。

施主様ご夫妻・松本(大工)・施主様のお祖父様・後藤(一級建築士)

焼杉の外観

後藤(建築士):
外観については、特にご主人が「焼杉がいい」っておっしゃってたんですよね。うちも100年くらいやってきてて、これまでにOBのお客さんのリフォームなんかもたくさん見てきたんですけど、最終的に一番メンテナンスの手間が少なくて、コスパ的にもいいのはやっぱり「焼杉」かなっていうのがあります。ただ、全部を焼杉にしちゃうと見た目が真っ黒になりすぎちゃうので、ちょっと差し色として別の板材を取り入れて、見た目にも変化が出るようにして、飽きがこないように工夫しました。

差し色が映える焼杉が印象的な外観

杉×タモ材 | スッキリ見せる工夫

後藤(建築士):
できるだけ杉材を使ったり、1階のLDKにはタモ材を取り入れるような形で進めさせてもらいました。窓枠も、できるだけ薄く加工して、すっきり見えるように工夫してます。やっぱり枠が分厚いのと薄いのとでは、見た目の印象が全然違うんですよね。障子のところはどうしても厚みが出ちゃうんですけど…。
そのへん、大工の松本さんにはちょっとグチグチ言われました、正直(笑)。「こんなの加工できん!」って。板に反りがあるからって、結構言われましたね。

細さにこだわった窓の額縁

松本(大工):
そうですね。どうしても無垢材なんで反りがあったり、窓の額縁もそうなんですけど、普通の簡単な木とは違って、クセがあるような木をまっすぐにし薄くできたのが僕的にはとても良かったです。

施主ご主人
ありがとうございます。

後藤(建築士):
やっぱり僕らもイメージしながら提案してるので、こうして形になると「良かったな」って思いますね。たとえば畳コーナーの引き出しまわりのこの部分なんかも、すっきりと細めに仕上げてるんですよ。これがもし1.5倍とか2倍くらいの厚さになってたら、ちょっと「もっさり」した印象になっちゃうんで、やっぱり細さにはこだわりましたね。

細さにこだわった引き出しまわり

施主奥様・ご主人:
私たちは仕上がってから「薄くしてます。」と聞いて。
きれいで感動した覚えがあります。

エキスパンションジョイント

エキスパンションジョイントとは、建物の伸縮や変形(地震や温度変化など)による影響を吸収し、構造体の安全性向上を目的とする工法です。

後藤(建築士):
母屋と増改築部分は、構造的に別々にしてるんですよ。完全にくっつけちゃうと、構造が違うから地震が来たときに揺れ方が変わって、その部分が壊れやすくなるんです。だから今回は「エキスパンションジョイント」っていう方法で、外から見たり中から見たりするとくっついてるように見えるけど、構造上はちゃんと分かれてるようにしてます。

後藤(建築士):
ここが新しい家の壁ラインでこっちが古い母屋の壁ラインですね。間に、極端な話、壁があるということです。

光と風 | 取り込む工夫

後藤(建築士):
母屋と裏側に平屋があるんですけど、それにくっつけて建てたいっていう希望があって、中庭を取り入れたいとか、おじいさんの農機具を必ずその平屋側から出したいっていう計画があったんです。それで、このあたりは山があるので東側からの朝日が入るのがちょっと遅いんですけど、中庭はできるだけ明るくしたいなと思ってました。

三世代が暮らす工夫

後藤(建築士):
3世代が住まれるので、プライベートといいますか。その辺もやっぱり家族の中なんですけど、確保しつつできるような形で、プランニング、ゾーニングという形にさせていただきました。

漆喰塗り | 光を反射させる

後藤(建築士):
中庭で母屋の方の外壁を1階の途中までは焼杉で張っているんですけど、それから上は左官屋さんの仕上げで白色の漆喰塗りにして、朝日が東から上がってきたら、漆喰に反射して中庭に光が入るようにしました。

後藤(建築士):
逆に言うと、西日は母屋も外壁も立ち上がっているので、できるだけ遮るという形にしているので、夏場のバーベキューも午後以降やる場合でも暑くはないかなと。あと、風は上からでも入ってくると思うんですけど、玄関や勝手口ドアを付けているんですけど、それを開けてもらったら風が通るようにしています。

2階 | スケルトン・インフィル


スケルトン・インフィルとは、住宅の構造躯体(スケルトン)と間取りや内装・設備(インフィル)を明確に分離して設計・施工する手法です。これにより、構造躯体は長期間の耐久性を持ち、内装や間取りはライフスタイルの変化に合わせて柔軟に変更できるようになります。

後藤(建築士):
2階は、将来リフォームされた時に間取りを変更しやすいように、子供室、ファミクロも2階全体ができるだけスケルトン・インフィルで計画はしています。将来的な間取りの変更をしても構造上問題ないような形で計画しています。

収納力のあるファミリークロゼット

増築で気をつけたこと

後藤(建築士):
取り合い部分といいますか、増築のこのくっつけるところ(エキスパンションジョイント)がそうですね。最初その辺をきっちりと計画する時も気をつけてやっておかないと、いざ工事が進んで「やっぱこれできんや」ってなったら一番困るんで。その辺が一番気を使いましたね。はい。

玄関ポーチ | 淡路砂利の洗い出し

後藤(建築士):
玄関の敷居も今回、石で作ったんですけど、それが石屋さんもすごく頑張ってくれて、めちゃくちゃうまいこときれいに納まったなと。あれはすごいなと。(笑)

施主ご主人様:
きれいですね。

後藤(建築士)

玄関の床なので水洗いする可能性があるんで、木の枠を下まで下ろしてたら、腐りやすくなるんです。今回はその下の部分、これも石で作ったんです。すごくうまく石屋さんがやってくれたなというね。あれはなかなか。

ご主人

あれはきれい。

瓦屋根

後藤(建築士):
外観からすると、やはり屋根は瓦がいいかなと思います。流行りで設計も簡単なガルバリウムが多いんですけれども。ガルバリウムは屋根の勾配とかも全然気にしなくても設計できますし、容易なんすけど。瓦にする場合は屋根の勾配が関わってくるので、ちゃんと考えないと高さ制限に引っかかることもあるんですよね。でも、いろいろ考えたうえで、やっぱり長い目で見たら瓦屋根がいいのかなって思ったんです。

外壁材・内装材について

後藤(建築士):
あと、やっぱり外壁材は板がいいですね。縦張りにするのが、一番将来的なメンテナンス費用とかもかかりにくいみたいなんです。で、中はやっぱり無垢材。最近はオークも流行ってますけど、やっぱり針葉樹系がいいかなって思ってて。スギとかヒノキ、マツあたりですね。もちろん、やわらかい木だからへこみやすいっていうデメリットはあるんですけど、その分、あたたかみがあるし、使っていくうちに味も出ると思うんです。

後藤(建築士):
それと、ポイントでタモ材も使ってます。たとえばこの巾木とか、全部タモで造作してるんですよ。この細いやつ。あとは造作のドア枠とか、さっき言ってた窓枠なんかも全部タモ材で統一してます。障子もそうですけど、ところどころに広葉樹のタモみたいな堅木を使ってあげると、意外と針葉樹のスギとすごく相性がいいんですよね。

施主ご主人:
木目がかっこいい。めちゃくちゃ格好いい。説明されんとこだわったとこが分からへんからもっと教えて教えて。(笑)自慢するのに教えて欲しいって。(笑)

後藤(建築士):
あとはこの、松の梁のボルトを隠しているカバーなんです。それもタモで行ってるんです。

タモで作ったボルト隠しのカバー

中庭

松本(大工)

お気に入りの点っていうか、皆さんもよく言われるんですけど、やっぱり玄関からも、リビングからも、洋室からも、そして母屋からも出られる中庭が、一番のお気に入りですね。

後藤(建築士)

(これから建てる方に)余裕があれば中庭があると、やっぱり全然プライバシーも保てるし、外でお酒飲んだりとか、そういうこともできるんで、やっぱりあった方がいいのかなって思います。

一級建築士|後藤の印象は?

奥様

まっすぐな方だなと思いましたね。仕事に対してすごく丁寧でこの人に任せとったらほんまに家ができるんやろうなって直感で思ったし、あとは分からんことも不安やなと思ったことを全部すぐ即決で解決してくれるので、すごい頼もしいなって思いました。

ご主人

嫁が言ったんと一緒ですけども、レスポンスが早いのと返ってくる答えに理屈や芯が通っているいうのか納得する答えが返ってくるんで、すごい任せられるなというのが一つですね。はい。

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