焼杉(やきすぎ)の外壁は、その独特の風合いや多様な魅力で近年人気を集めています。
ガルバニウムやサイディングといった他の外壁材と比べて、焼杉ならではの利点とは?
長期的なメンテナンスコストを抑えることができる「焼杉(やきすぎ)の外壁」をご紹介します。
焼杉とは
焼杉(やきすぎ)とは、杉板を焼き焦がし表面を「炭化」させた天然素材の外壁材です。
表面を「炭化」させることで、耐久性が向上します。炭化層は防虫効果もあり、木材が虫に食われにくくなるため、長期間にわたり美しさを保つことができます。
また、表面が炭化しているため、焼杉は火に対する耐性も高まります。
焼杉と日本の家
焼杉は、日本の伝統的な建築技法の一つであり、西日本で古くから使われてきました。
特に、瀬戸内地方や九州地方などで広く用いられてきました。古民家や神社仏閣などに焼杉が使われており、その美しさと機能性が再評価されています。
杉が選ばれた理由
杉の木が焼杉に選ばれる理由ですが、杉は日本に古くから自生しており、建築材としての歴史も長いです。日本の風土や気候に適しており、伝統的な建築物にも多く使われてきました。焼杉の技法も、こうした歴史的背景の中で発展してきたものだと思います。
また、杉の木は柔らかく、加工がしやすい特性を持っています。焼くことで硬化しますが、加工自体は比較的容易であるため、さまざまなデザインや仕上げが可能です。
焼杉の魅力
焼杉の魅力は、高い意匠性にもあると思います。
その独特の美しさ、経年変化による風合い、多様な仕上げ方法、そしてモダンデザインとの調和力。
私も異なる魅力を持つ「焼杉」と「ガルバニウム」を組み合わせ、スタイリッシュなデザインをご提案することがあります。シンプルで洗練されたデザインは「粋」であり、「存在感」のある家になり採用していただくことが多いですね。
また、自然素材である無垢材を多く使用したデザインや、内外装を自然素材で統一したデザインの実現においても大きな魅力を発揮します。
フランスで人気の「焼杉」
日本で古くから使用されてきた「焼杉」が、フランスや北欧、アメリカなどで人気なのをご存知ですか?
日本に旅行にきた海外の建築家が、日本の木構造だけでなく、「黒い外壁材・焼杉」がスタイリッシュでとても「美しいもの」に映ったようです。
ヨーロッパには、現在でも現役の何百年前の建物が沢山あります。
フランスはオーガニックの先進国としても知られていますが、自然素材の無垢材である杉を「焼いただけ」の「焼杉の外壁」は、ナチュラルなものを好むフランス人にも「オーガニックハウス」として支持されているのかもしれません。
焼杉とガルバニウム・サイディングの違い、性能・コスト比較
焼杉と一般的な外壁材(ガルバリウムやサイディング)との違いを比較してみましょう。各素材のメリットやデメリットもご紹介します。
特性 | 焼杉 | ガルバリウム | サイディング |
美しさ | 自然で独特の風合い | モダンで シャープなデザイン | 多様なデザイン、 色の選択肢 |
耐久性 | (炭化による) | 高い非常に高い | 高い |
防錆性 | 自然な防虫効果 | 非常に高い | 一部製品で高い |
軽量性 | 軽量 | 非常に軽量 | 重量 (製品による) |
メンテナンス | ほとんど不要 | メンテナンスは汚れを水で 洗い流すだけ | 再塗装やコーキングの メンテが必要 |
環境への配慮 | 非常に高い | リサイクル可能 | 一部製品は 環境負荷が少ない |
経年変化 | 美しい風合いが増す | 色あせることがある | 継ぎ目の劣化が 発生することがある |
コストの高さ -他店 | ★★★★ | ★★★ | ★★ (製品による) |
コストの高さ -後藤工務店 | ★★ | ★★★ | ★★ |
焼杉の費用について抑えておきましょう。焼杉はガルバニウムやサイディングの費用と比較すると、一般的に初期導入コストが高くなります。その理由は「流通経路」と「焼杉を扱える大工の不在」にあります。一方、上記表で、ご確認いただけますように後藤工務店では焼杉の費用は、一般的な外壁材(ガルバリウムやサイディング)と同等、もしくは安くなります。
流通経路とは「焼杉」が工務店(施主様)に届くまでの仕入れルートのことです。「直接仕入れ」なのか、第三者を挟むのか、その場合にはいくつの仲介業者を経由して工務店に「焼杉」が届いているかという意味です。当然、直接仕入れの方が同じ焼杉でも安く提供できます。
「焼杉」を扱える大工が不在の場合には新たに技術者を頼む費用が発生するため、高くなります。
◯ 創業100年の実績と引き継がれた技術から、材木市場や材木店からの直接仕入れができるため
◯ 自社の大工が施工できるため
また焼杉はメンテナンスがほぼ不要の外壁材です。短期的にも長期的にも焼杉は非常にコストパフォーマンスにすぐれた外壁材だと言えます。
焼杉外壁の施工事例
1
外装
軒の深い切妻屋根で杉の焼き板の黒色と軒天の杉の無塗装の色合いがかっこいい2階建てのお家(加東市M様)
内装
床材は杉のフロアを使用して一部には浮造り加工を施工することで歩き心地を良くしました。
2
焼き杉板の外壁が美しいモダンな平屋
桧、杉の無垢材、自然素材をふんだんに使用していますので、さわやかな木の香りに包まれ心が安らぎます。
濡れ縁を造作
リビングからそのまま出られる濡れ縁。プライベートを守りつつ、内と外の一体感もある平屋は、シニア世代にも安心な住まいです。
焼杉外壁のリフォーム事例
焼き杉と小さな屋根付き窓、茅葺屋根がマッチした新感覚の古民家リフォーム
焼杉ってどうやって作られるの?
塗装では出せない独特の色合いと質感と機能性を持つ日本の伝統、「焼杉」。
伝統的な手法も交えながらご紹介します。
乾燥した杉の板を用意します。バーナーを使い、板の表面を均等に焼き、炭化層を作ります。伝統的な方法では、三角形に組んだ内部に火をつけ、しばらく放置ししっかり焼きます。
焼け残しの部分や小口の部分を確認しながら、仕上げ焼きです。よく乾燥させた杉板を使うことが、上手に焼くための大切なポイントです。
十分に焼けたら、火を消して木材を冷まします。冷却には水を使用します。冷却後、表面の炭化層がしっかりと硬化します。
表面のすすや灰を取り除きます。この工程により、木目がより鮮明に現れ、美しい風合いが得られます。
最後に、再度乾燥させて完成です。
私どもも以前は、現場で焼いて作っていましたが、現在は信頼のおける材木屋さんが自社で焼いたものを仕入れています。
おわりに・見直される焼杉
近年、焼杉が再評価されています。
海外でも「自然な素材」として人気の背景には、環境意識の高まりや伝統的な技法の見直し、そして現代建築におけるデザイン性の追求などがあるのではないでしょうか?
自然素材である焼杉は、環境に優しい選択肢です。
化学処理を施さず、自然の防腐・防虫効果を活用する焼杉は、持続可能な建築材料です。
日本の伝統的な建築技法を受け継いできた私たち後藤工務店は、モダンな住宅の外壁や内装に焼杉を取り入れ、自然素材と現代的なデザインを融合させるご提案を多くしています。
焼杉の特徴である耐久性や防虫性、防火性(炭化による表面の硬化)は現代の建築材料と比較しても優れており、実用的な面でも再評価されています。
焼杉の外壁は、伝統と現代の技術が融合した魅力的な選択肢であり、新築だけでなく古民家のリフォームにおいてもその魅力を十分に発揮します。
時間とともに色合いや風合いが変化し、味わいが増す焼き杉の外壁。
この美しい「経年変化」を愉しんでみませんか?